ぶぐばぐ会
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 『拙者親方と申すは、御立会の中に御存じのお方もござりませうが、』
    拙者=自分を謙遜していう言葉。武士が目上に対して用いたりする。
      親方=職人、奉公人などが仕えるべき主人。
   お立会い=その場に居合わせている人たち。

   意訳『私どもの親方という人は、ここにおられる皆さま方の中にご存知の方も
     いらっしゃるでしょうが、』

『お江戸を立つて二十里上方、』
   立って=当時は、旅の出発は日の出とともに出発した。
  「七ッ発ち」という歌がありますが、七ッとは、午前4時頃。江戸時代は季節
  により異なった
時刻制度であった。
   二十里=一里が約4kmなので、約80km。普通の人で一日30km〜40km
    歩いたと言われますから、江戸からは2〜3日かかった。

     上方=京都、大阪方面

   意訳『江戸を出発して、大阪方面に約80kmほど』

『相州小田原一しき町をお過ぎなされて、
     青物町を登りへおい出なさるれば、』

   相州=相模国(国府は海老名)ちなみに江戸は武蔵国(国府は府中)
   一色町=小田原の東のはずれ、酒匂川から西の地区で今の東町。
  「網一色」「山王網一色」と
いう地区名が残っているようです。全国に一色町
   と称するところがあり、年貢を米以外の
特産品で納めることを許された町。
 
  青物町=野菜の市が開かれていた。
   上り=京都、大阪方面。反対に江戸方面は「下り」。
  「くだらないモノ」とは江戸までもっていく価値のないモノの意。

 
   意訳『相模の国の小田原の一色町を過ぎ、青物町を大阪方面に進みますと』

『欄干橋虎屋藤右衛門、只今は剃髪いたして、圓齋と名乗りまする』
   
欄干橋=外郎家のある場所で、城内に架けられていた橋があった。
   虎屋=外郎家の屋号。
   藤右衛門=外郎家の当主が代々名乗ってきた名前。

   意訳『欄干橋のところに虎屋という店があり、(親方は以前は)藤右衛門と
     いいましたが、いまは隠居し剃髪して円斎と名乗っております』


 『元朝より大晦日までお手に入れまする此の薬は、』
   元朝=元旦の朝。

   意訳『元旦の朝から大晦日まで、つまり一年中、
          お手に取って頂けるこの薬は』

 『昔ちんの國の唐人ういらうといふ人、我が朝に来り、』
   ちん=優れた国。 唐人=中国人。 我が朝=日本。

   意訳=『その昔、優れた国の中国人で外郎(ういろう)という人が日本に
      来られた』


 『帝へ参内の折から、此の薬を深く籠め置き、』
   帝=宮中。 参内=参上する。 籠め置き=包み隠して表に出さない。

   意訳=『宮中に参上する機会があったのですが、その時、この薬を自分の
      冠の中に大事にしまっておいて、』

 『用ゆる時は一粒づゝ冠の透間より取り出だす。
   用ゆる時=使う時。

   意訳=『使う時は、一粒づつ冠の透間から取り出して使用しました』

 『依て其の名を帝より透頂香と給わる』
   依って=それで。  給わる=目上の人から物などをいただく。

   意訳=『それで、薬の名を天皇より「透頂香」と下賜されたのです』

 『即ち文字は透き頂く香と書いてとうちんかうと申す。』

   意訳=『すなわち文字には「頂き、透く、香い」と書いて、「とうちんこう」
      と読むわけです。』

  
  『只今は此の薬 殊の外(ことのほか)世上(せじょう)に弘(ひろ)
    まりほうぼうに偽看板を出(い)だし、』

     殊の外=想像以上に、思いのほか    世上=世の中に、世間
  ほうぼうに=あちらこちらに   偽看板を出す=類似品まで出して

   意訳『いまはこの薬は思いのほか世間に広まっており、あちこちに、類似品が
         出回っています』

  『イヤ小田原の 灰俵のさん俵の炭俵のと いろいろに申せども、平假名を
    以てういろうと致せしは 親方圓齋ばかり、』

     、さん、炭=小田原のダワラと韻を踏ませている
  ばかり=〜だけ

   意訳『なんだかんだと、小田原と間違えるように書かれているけれど、
         平仮名で、ういろうと呼んでいるのは、親方の圓齋だけです』

  『若しや御立會の中(うち)に、熱海か塔の澤へ湯治にお出(いで)なさ
    るゝか、又伊勢御参宮の折からは、必らず門違ひなされまするな。』

     熱海、塔ノ沢=温泉地として有名    湯治=温泉入浴の治療
     伊勢御参宮=伊勢神宮への参拝旅行  折=その時  必ず=決して、絶対に    門違い=訪ねるべき家を間違う

   意訳『もし、ここにお集まりの皆さまの中で、熱海か塔ノ沢の温泉へ湯治に
         お出かけになるか、また伊勢神宮への参拝旅行へ出かけるその時は、
         絶対に違う家(店)へ行かれることのないように』

  『お上りならば右の方、お下りなれば左側、八方が八棟、表が三ッ棟
    玉堂造り、破風には菊に桐の薹の御紋を御赦免あって、系図正しき
    薬でござる。』

    お上り=京都方面へ向かう    お下り=江戸方面へ向かう
    八方=八つの方角、あらゆる方面   棟=屋根の背に当たる部分  
    八棟=豪華な民家の建て方で、破風をつけたものが多い
   玉堂造り=美しい殿堂のこと  破風=切妻屋根の両端につける飾り
   菊に桐の薹の御紋=天皇家の紋章   御赦免=お許しをいただいている      系図=由緒

   意訳『京都方面に向かわれるなら右、江戸方面に向かわれるなら左側、屋敷は
         屋根のとがった部分が8つ、門構えは屋根のとんがり部分が3つ、
         美しい屋敷で、切妻屋根の両側の破風には天皇家よりお許しをいただき
         菊と桐の御紋を描いていて、由緒正しい薬です。』

  『イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存じない方には、
    正身(しょうじん)の胡椒の丸呑、白川夜舟。』
  
     最前より=先刻より  家名=家の呼び名、店の名  正身=生身の、そのもの
     胡椒の丸呑=かまずに丸呑みしては、表面だけを見て、真の意味、物事の本質を
   理解しない
      白川夜舟=ぐっすり眠りで何が起こったか知らないたとえ       *京都の白河(地名)のことを聞かれた人が、夜船で通ったから知らない
        と答え、
京都見学の嘘がバレたという話から、知ったかぶりをすること

   意訳『さきほどから家名(店)の自慢話をしてますが、(ういろうを)知ら
         ない人にとっては、
見たことも聞いたこともない胡散臭い薬と思われ
         ているでしょう』

  『さらば一粒(いちりゅう)たべかけて、其の気味合をお目に懸けませう。』
     さらば=然らば=それでは、それならば   たべかけて=口にいれてみて
     気味合=気分の良いさま、効能、効果

   意訳『なので、実際に一粒服用してみせて、その効能をお見せしましょう』

  『先ず此の薬を斯様に一粒(ひとつぶ)舌の上へ載せまして、腹内へ
    納めますると、イヤどうもいへぬは、』

     斯様に=このように   腹内=お腹の中      どうもいえぬは=大変良くて、
   何とも言えない、形容しようもない

   意訳『まずこの薬をこのように一粒、舌の上に乗せ、お腹の中へ飲み込みます
         と、何とも形容
できません』

  『胃心肺肝が健やかに成って、薫風咽喉(のんど)より来り、口中びりやう
    を生ずるが如し、』

      胃心肺肝=胃、心臓、肺、肝臓   薫風=初夏の若葉や青葉の香りを含んだ
    爽やかな風
     びりやう=微涼

    意訳『胃、心臓、肺、肝臓がスッキリとして、初夏の新緑の木々の間を吹く
          快い風のように、
爽やかな香りが喉元から出て口の中が少し涼しい
          感じがします』

  『魚、鳥、木の子、麺類の喰合せ、其の外萬病即効あること神の如し。』
      木の子=きのこ、茸   神の如し=神の領域

    意訳『魚や鳥やキノコや麺類の食べ合わせによる体調不全や、そのほか
          あらゆる病気に効く
速さは、まさに神業のようだ』

  『扨(さて)此の薬、第一の奇妙には、舌の廻ることが銭ごまが跣足
  (はだし)で迯る。』

     扨=話は変わって   奇妙=不思議なこと、珍しいこと
     銭ごま=銭の穴に軸を通して心棒として糸を巻きつけてコマのようにまわす
     跣足で迯る=(クルクルとよく回る銭独楽でさえ)「かなわぬ」と裸足で
   逃げだす程の勢い

   意訳『さてこの薬ですが、特に不思議な事には、良く廻る銭ごまでさえ履物を
         履くのを忘れて
逃げ出すくらいに舌が廻る』

  『ひよっと舌が廻りだすと、矢も楯もたまらぬぢゃ。』
      ひよっと=ひょいと     矢も楯もたまらぬ=弓矢で攻めても、楯で止めようと
    しても勢いを止められない

   意訳『うっかり舌が廻りだすと、矢でも楯で武装しても勝てない程すごいです』

  『そりやそりやそらそりや廻つて来たわ、廻つて来るわ。』

   意訳『それそれそれ、舌が廻ってきます。廻ってきました』

  『あわや咽喉、さたらな舌にかげさしおん、』
   あわや咽喉(のんど)=ア行、ワ行、ヤ行は咽喉の奥からの息で出す音
   さたらな舌(ぜつ)=サ行、タ行、ラ行、ナ行は舌で出す音
   かげさしおん=カ行は奥歯の方(牙げ)から出す音、サ行は歯や歯ぐきと舌
  で調節される音


   意訳『「あ・わ・や」は咽音、「さ・た・ら・な」は舌音、「か」は牙音、
     「さ」は歯音です』

 『はまの二ツは唇の軽重かいごふ爽に、』
   はまの二ツは=ハ行(昔はファ)とマ行の二つ
  
唇の軽重かいごふ=唇の閉じ加減で出す音

   意訳『「は(ファ)・ま」は唇音。この薬を飲むと唇の閉じ加減も軽やかです』
  
     ** ここからは、早口言葉、言葉の遊びが続きます **

 『あかさたな、はまやらわ、おこそとの、ほもよろを。』

 『一ツへぎへぎにへぎほし、はじかみ、盆まめ盆米ぼんごぼう。』
   へぎへぎ=折(へぎ=薄く木を削ったもの)  
  *新潟に「へぎそば」という蕎麦がある

   へぎほし=欠き餅   
  はじかみ=生姜の古い呼び名、かつては山椒もこのように呼んだ

   盆まめ盆米ぼんごぼう=お盆に供える豆、米、牛蒡

 『摘蓼つみ豆つみ山椒、書寫山の社僧正。』
   蓼=タデ   書写山=姫路の圓教寺(西国札所の27番札所)
  社僧正=坊さん、写僧正か?

 『こゞめのなま噛、小米のなま噛、こん小米のこなまがみ、
   こごめ=小米、粉米(脱穀過程で砕けてしまった米)
  なま噛=生噛み
   こん、こ=接頭語

 『繻子ひじゆす繻子繻珍。』
   繻子=朱子、繻子織、サテン   ひじゆす=緋繻子    
   繻珍=朱珍、繻子地に文様を浮織りにした布地

 『親も嘉兵衛子も嘉兵衛、親嘉兵衛子かへえ子嘉兵衛親かへえ。』

 『古栗の木のふる切口、雨合羽かばん合羽か、貴様の脚絆も皮脚絆、
  我等が脚絆も皮脚絆。』

   ばん合羽=番合羽、粗末な合羽(?) 合羽=ポルトガル語のcapa(覆い)から
  貴様=あなた様(敬語)  我等=自分たち   脚絆=脛の部分に巻く被服

 『しつかわ袴のしつぽころびを、三針はりながにちよと縫ふて、
  ぬふてちよとぶんだせ。』

   しつ、しっ、ちょと=接頭語   かわ袴=革袴   ぽころび=ほころび
  はりながに=幅広く、間に合わせで  ぶんだせ=外へ飛び出せ

   意訳『革袴のほころびを、間に合わせで3針ちょっと縫って、ちょっと外へ
     飛び出せ』

 『かはら撫子野石竹、のら如来のら如来、みのら如来、むのら如来』
   かはら撫子=(河原)撫子=別名ヤマトナデシコ
  (野)石竹=ナデシコ科ですが中国原産なのでカラ(唐)ナデシコという

 『一寸のお小仏に、お蹴つまづきやるな、細溝にどぢょによろり』
   お=接頭語   小仏=小さな仏様   つまづきやるな=躓きなされるな
   どぢよ=ドジョウ(泥鰌)

 『京のなま鱈、奈良なま学鰹、ちよと四五貫目』
   なま鱈=生の鱈(タラ)   なま学鰹(まながつお)=生のマナガツオ
  (イボダイのことかも?)  ちよと=ちょっと

 『おちや立ちよ茶立ちよ、ちやつと立ちよ茶立ちよ、青竹茶筅でお茶
  ちやつと立ちや』

   おちや=お茶  立ちよ、立ちや=立ててくれ、立てろ
  ちやつと=すばやく

 『来るわ来るわ何が来る、高野の山のおこけら小僧、狸百疋箸百ぜん、
  天目百ぱい棒八百本』

   高野の山=真言宗の総本山の高野山金剛峰寺   
  おこけら=木っ端、取るに足らない
    百疋=百匹   
  天目=天目茶碗(抹茶の茶碗)

 『武具馬具ぶぐばぐ三ぶぐばぐ、合て武具馬具六ぶぐばぐ』

 『菊栗きくゝり三きくゝり合て菊栗六きくゝり』

 『麦ごみむぎごみ三むぎごみ、合て麦ごみ六むぎごみ』

 『あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ』
   長押=鴨居の上に取り付ける横木   誰が=誰の

 『向ふのごまがらは荏の胡麻殻か眞胡麻殻か、あれこそほんの眞胡麻殻』
   荏の胡麻殻=エゴマ(じつはゴマ科ではなく、シソ科の一年草)
   眞胡麻=マゴマ(ゴマ科の一年草)  殻=搾ったカス

 『がらぴいがらぴい風車、おきやがれこぼし、おきやがれこぼおし、
  ゆんべもこぼして又こぼした』

   がらぴい=前の殻(がら)から   おきやがれこぼし=風車に続いて、
 「起き上がり小法師(こぼし、こぼうし)」という会津地方の民芸品から
  おきやがれ=起きろ!  こぼおし=小法子=年の若い僧  
  こぼした=寝小便をした

  『たあぷぽたあぷぽヽちりからちりからつつたつぽ、たつぽたつぽ
   干(ひい)だこ、落ちたら煮て食を

     たあぷぽヽ=太鼓の音の擬音。二挺鼓(にちょうつづみ)の囃子と擬音。
   「ちりから(鼓)たっぽう(太鼓)。ちりからちったぽう」という表現あり。
     干(ひい)だこ=干し蛸。「ひい」は笛の音から

  『煮ても焼いても喰はれるぬものは、五徳、鐵きう、かな熊どうじに、
     石熊、石持、虎熊、虎ぎす』
            *前の「煮て食を」の逆に食べられないモノを並べている。
     五徳=炭火などの上に設置し、鍋やヤカンなどを置く器具。   
   鐵きう=鉄弓=鉄網   かな熊どうじ=金熊童子
*  石熊=石熊童子*のこと
  石持=イシモチ(魚)  虎熊=虎熊童子
*のこと  虎ぎす=トラキス(魚)       *は酒呑童子の手下

  『中にも東寺の羅生門には、茨木童子が、うで栗五合、掴んでおむしやる』
     東寺=京都の東寺    羅生門=羅城門
     茨木童子=酒呑童子の最も重要な家来。羅生門では渡辺綱とわたりあい腕を
   切り落されるが、
綱の伯母に化けてまんまと腕を取り戻す。
    うで栗=茹でた栗=*渡辺綱に切り落とされた茨木童子の腕と掛けている
     おむしやる=いらっしゃる

  『かの頼光の膝元去らず』
   頼光=源頼光(よりみつ)*平安中期の武将。天暦二年(948)源満仲の長子
     として生れ治安元年(1021)に74歳で没す。

    膝元去らず=離れることなく

  『鮒きんかん、椎茸、定めてごたんな、そば切そうめん、うどんか、
   愚鈍なこ新發知』

     鮒=渡辺綱(わたなべのつな)のこと。*平安中期の武将。天暦七年(953
   源宛(みなもとのあつる)の子として生まれ、万寿二年(
102573歳で没す。
    きんかん=坂田金時(さかたのきんとき)のこと。*金太郎の名で有名。
   生没年不詳。伝説上の人物とされる。

    椎茸=占部(卜部)季武(うらべのすえたけ)のこと。*平安中期の武将。
   天暦四年(
950)に生まれ、治安二年(1022)に没す。
    定めて=碓井貞光(うすいのさだみつ)のこと。*平安中期の武士。
   天暦八年(
954)に生まれ、治安元年(1021)に没す。
    ごたんな=後段は=江戸期、客をもてなす時は食後に他の食べ物を出した。
   夜食。
  *こうだん=すいとんやそばの軽食
    新發知=仏門に入って間もない者

  『小棚の小下の小桶に小味噌こあるぞ、こ杓子こもって、
  こすくってこよこせ』

   文の前に「こ」(小)をつけている

 『おっと合点だ、心得たんぼの川崎、かな川、程がや、とつかは
  走って行けば、灸を摺りむく』
  
「心得た」「たんぼ」=心得たんぼ
  川崎、かな川、程がや、とつか=東海道の宿場(神奈川、保土ヶ谷、戸塚)
  とつか=「どこか」とも。 灸(やいと)=膝のツボ

 『三里ばかりか、藤澤、平塚、大磯がしや、小磯の宿を、
  七ツ起きして早天さうさう、相州小田原透頂香』
  
三里=距離の3里とお灸のツボをかけている
  大磯がしや=「大磯」「忙しい」
  小磯=「大磯」に対してだが、小磯という宿場はない
  七ツ=午前4時頃。  さうさう=相州につなげる

 『隠れござらぬ、貴賤群集の花のお江戸の花ういらう』
  
隠れござらぬ=隠れるところもない、有名な
  貴賤群集=身分の高い人も低い人も寄り集まる
  花のお江戸の=華やかな江戸のように素晴らしい

 『あれあの花を見て、お心をお和らぎやといふ』
  
お和(やわ)らぎ=おだやかにしなさい
  ぎあ=次のフレイズに続く(赤ん坊の声)

 『産子這子に至るまで、此のういらうの御評判、
  御存じないとは申されまいまいつぶり、』
  
産子(うぶこ)=生まれたての子
  這子(はうこ)=這い這いする子。乳児
  まいまいつぶり=カタツムリ

 『角出せ棒出せぼうぼう眉に、臼杵擂鉢、ばちばちぐわらぐわら
  ぐわらと、羽目を外して今日御出の何れ茂様に』
  
角出せ棒出せ=cf: 角出せ、槍出せ、頭(目玉)出せ
  ぼうぼう眉=生えたままの自分の眉毛
  臼杵擂鉢=「ばちばち」へ続く
  ばちばちぐわらぐわらぐわらと=バチバチ、ガラガラと音を立て
  羽目を外して=調子に乗って非常識なことをする
  何(いず)れ茂(も)様=みなみなさま

 『あげねばならぬ売らねばならぬと、息せい引張り、東方世界の
  薬の元締、薬師如来も上覧あれと、ホヽ敬まつて、
  ういらうはいらつしゃりませぬか。』
  
息せい引張り=力を込めて、気を張って
  東方世界=薬師如来の浄土。「浄瑠璃浄土」
  薬の元締=薬師如来は薬壺(やっこ)を持っているので
  上覧あれ=ご覧ください
  ホヽ敬って=(お立会いの皆さまも、薬師如来を)敬って
  いらつしゃりませぬか=ご入用はありませんか


                 二代目團十郎による 自作自演の口上