新商売
その@
上海の郊外、ちょうど他の地区から上海市内への道路の入口付近へ行くと、道路の脇に立って「帯路」という文字を紙切れなどに書いて持っている人を見かける。まるでヒッチハイクでもしているかのようだ。しかし、予想はハズレた。
上海には人もドンドン入ってくるが、人だけでなくクルマもまた上海へ上海へと入ってくる。お隣りの安徽省、江蘇省、浙江省、河南省などから荷物を積載したトラックが入ってくる。積荷は野菜などの農産物をはじめ、工業製品や原材料も多い。当然ながら、トラックを運転してくる人は田舎からのドライバーであるから上海の土地には不案内である。上海は道路事情が複雑で、最近は市内の中心では一方通行や停車禁止区域も多い。交通違反で公安に捕まってしまうと、罰金は取られるし点数は減点されて、運転ができなくなる恐れもある。
悩んでいるそんなあなたのために、こんな商売がでてきた。
「帯路」とは、お金をもらってクルマに同乗し、目的地まで道案内をするのである。
さてこの商売、果たして儲かっているのかどうかはわからない。
そのA
空港(注:虹橋空港)へ行く道路は一本しかない。この道路が時として非常に渋滞する。曜日や時間帯により渋滞が予想されることはあるが、いったい何が原因なのか分からないことが多い。とにかく道路の整備に比べて、クルマが多いことは間違いない。こんな時、飛行機に乗る予定の人はイライラ、ハラハラのしどおしである。
渋滞が特にひどい時、『♪ど〜この誰かは知らないけれど、、、』と、「月光仮面」のように白いマスクはしていないけれど、バイクに乗ったお兄ちゃんがどこからともなく出没してくる。ノロノロ運転のタクシーに乗っている乗客に対して、窓越しに「机場、机場(=空港)」と声を懸けて勧誘する。飛行機の出発時刻が迫ってきている人は、窮余の策で、タクシーからバイクに乗り換える。
片方の手でバイクの後ろにしがみつくように捕まり、もう一方の手で荷物をしっかりと握って、渋滞のクルマの洪水の中を縫うように空港へ向かう。
空港の区域には公安がいるので、空港のちょっと手前で降ろす。わずかに数キロの距離であるが、料金は200元が相場という。タクシーなら市内からでも40元である。
(1996年1月記述)
中国の銀行A
交通の話題
その@
昨年(1995年)10月1日のこと。この日は「国慶節」で中国の建国記念日。
新聞の発表によると、この日は交通規制がしかれ、夜の6時から10時までの間は、市内の中心部一帯にはクルマが入ることができない。そのことは知っていた。が、市内の中心にあるホテルへ行かなければならない仕事があったので、時間をつぶして待っていた。
9時55分にタクシーに乗った。こうすれば市内の制限区域に入る頃には確実に10時を廻る。早く仕事も終えたいし、これなら問題ないだろうと計算しての行動であった。
高架道路へ上がり、10時少し過ぎに高架道路の下り出口のところに来た。ところが、出口のところに公安が立っている。まだ降りることはできない、という。規制は10時30分までだという。おぃおぃ、冗談でしょう。高架道路を降りられなかったら、一体どうすればいいのだ。高架道路からは降りられない、路上に停車もできない。だったら走り続けるしかないじゃないか。タクシーだから走れば走るだけ料金がかかるんだ。
とうとう内環状線を半周してしまうまで、高架道路から降りられなかった。結局、30分で行けるはずが、1時間以上もかかる。料金も通常の2倍以上かかった。踏んだり蹴ったり。
そのA
やたら交通違反で捕まる時期がある。ドライバー自身が違反した時は、まぁ、仕方ない。しかし、信号機より公安が優先される中国では、たとえ前のクルマが右折できても、そのまま後ろをついていくと、公安に停止されたりする。たった今から右折禁止になったのだという。違反をしたのだから罰金を払え、とくる。
最近は「一方通行」が急増していて、それを知らなかったドライバーが犠牲になっている。事前の通報がないことが多い。
「ねずみとり」でのスピード違反もある。郊外にある公安の近くで実施されることが多いようだ。公安の狙いは罰金だから、ボーナス支給の直前に行われる。
かと思うと、交通事故を起こしてしまい、保険請求などの手続きのために公安に届け出ると、受付けてくれないこともあるという。今月の事故は何件までというノルマがあり、それ以上の事故があると成績に影響するので受付けないというのだ。
そのB
同乗していて怖いのは、割込み車である。直進と右折・左折との優先権がどうなっているのか、中国の道路交通法を読んだことがないので定かではないが、実態は割込み車が優先されているようだ。信号もなく、クルマも少ない郊外での直線道路であっても、いつ脇道からサッと割込み車があるか分からない。
右折・左折の場合も、他のクルマのことなどお構いなしにハンドルを切る。お互いクラクションを鳴らして譲ろうとしない。結局、押しの強い方が勝つ。停車していたクルマが周囲の確認もせず急に動き出す。当然のように。
ドライバー同士の、いわば「あうんの呼吸」によって何とかなっているようである。
が、避けられないタイミングもある。この場合は事故になる。
将来、中国でのレンタカーが可能になっても、われわれ外国人は運転して10分以内には事故を起こしてしまいそうだ。
(1996年2月記述)
交通整理のおばサン
本文とは関係ありません
郊外で見た事故